茹で前は、恥
江戸時代の職人さんは、「茹で前は、恥」という深く、重い金言を遺してくれました。この短い一言に、そば打ちのすべてがこめられていると言っても過言ではありません。
茹でたそばは、お客様の口へと運ばれるわけで、芯が残ってごわごわしたような半出来のそばを提供するのは、職人の沽券に関わるという意味での恥。
しっかりと茹でられるそばは、水回し、のし、切りが完璧ではじめて完成する貴重な品物なのに、それをいい加減な茹で仕事で粗末にしてしまうというのも恥。最近は、キチンと茹でていないそばを提供するお店が増えています。また硬めのそばが粋なそばと思われている方もいらっしゃるようです。良い麺はしなやかに茹で上がり、20−30秒くらい余計にゆでても崩れたりしません。
そばの茹で時間に迷ったら、遠慮なく余計に茹でておけば間違いないです。一流の釜前は、冷水にさらす時間を調整してその日のその麺の最適な硬さをこしらえています。
ご家庭でそばを茹でる
【1】できるだけ大きな鍋にお湯をわかし、沸騰させます。一人前約150g程度を計量しておきます。一人前ずつ茹でます。
【2】大きめのボールに水を張っておきます。
【3】沸騰している鍋に一人前のそばを入れ、麺がくっつかないように菜箸で鍋の中でゆるく8の字を描くようにして麺をほぐします。
箸の先で麺をつまんだりすると切れてしまいますので、ご注意ください。
【4】麺がほぐれたら、蓋をします。
【5】吹きこぼれる前に蓋をとり、火力を調整しながら沸騰状態を保ち、茹でます。
【6】麺をスクイザルですくい上げ、水を張ったボウルにさらします。
【7】麺をかるく洗い、水を切り、ざるに盛り、提供します。
【8】鍋に残った湯は、最後にそば湯としてお楽しみいただけます。
※硬めの麺がお好みであれば、しっかりと茹でた後に、氷水でしめるとコシのたったそばになります。
30秒ほど茹でただけでゆるく溶けてしまうそばは、加水量が多いそばだと思われますので、次回は加水量を減らしてそば打ちをしてみてください。
太さと茹で時間の関係
築地そばアカデミーのそば教室で使っているそばの太さと茹で時間の関係です。
時間は、沸騰したお湯に一人前(約150g前後)の麺を入れた後の時間です。鍋の大きさ、麺の量により誤差がでますので、あくまでも目安にしてください。